熊本大学拠点形成研究A主催 平成26年度第1回講演会
2014/04/30
熊本大学拠点形成研究A主催 特別講演会 「微量の血液で病気の診断、メタボロミクスの医療応用」 神戸大学大学院医学研究科・病因病態解析学分野長・准教授 吉田 優 博士 <講演要旨> メタボロームとは、生体試料(体液、組織、細胞等)に含まれる低分子代謝物(分子量1,000 以下)群です。これらの代謝物を網羅的に定性・定量解析することをメタボローム解析と呼び、主に質量分析計や核磁気共鳴(NMR: Nuclear Magnetic Resonance)を使って測定されています。生体内の代謝物を網羅的に解析するメタボローム解析(メタボロミクス)は,ポストゲノム科学の一分野として生まれた最も新しいオーム科学(網羅的代謝物解析情報に基づく科学)です。機能未知遺伝子の機能解明の有力な研究手段として、生命科学・医学研究、医療分野への応用が期待されています.特に近年では、質量分析計を用いた解析技術が進展し、ライフサイエンス分野では欠かせない研究手法の一つとなりつつあります。医学研究をはじめとしたさまざまな分野においてもその重要性が認識され始め、特にバイオマーカーの候補の検索に有用とされています。その理由として、様々な病態において、病気に関連する細胞・組織内において酵素タンパク質による代謝の変動が起こり、その疾患特有の代謝物のパターン(メタボロームプロファイル)へと変化し、それが血液・尿中にも反映することが予想されるからです。本講演では、食品、細胞、実験動物、臨床検体などの代謝物を網羅的に測定してその情報を統合し、プロファイリングによる評価、高解像度形質解析法を用いたメタボロミクスの基礎医学や臨床医学、特に癌を中心とした疾患バイオマーカー研究についてご紹介していただきました。