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研究内容

病気、患者、医療現場に向き合う薬学基礎研究

薬学研究は薬を武器として病気に立ち向かう研究領域です。本分野では、分子生物学の知識と技術、そして薬物動態の定量解析とシステムズバイオロジーを融合し駆使した薬学研究をおこないます。「なぜ薬学で研究をおこなわなければならないのか?」この問いに対する答えを持ちながら、薬という視点から最終的に患者、国民の利益(=ライフイノベーション)として応用できる研究を行っていきます。

1. 脳関門とトランスポーターから紐解く創薬と治療
脳関門は血液と脳との間の物質移動を阻む脳特有の機能です。トランスポーターは細胞内外の分子の輸送を担い、栄養物質の吸収、不要物の排出等に関わっている分子です。脳関門には様々なトランスポーターが存在することによって、脳に栄養物質を供給し、脳内で精製された不要物を血液中に排出し、そして薬物を含めた外来物質の脳への侵入を阻む、中枢維持防御シスステムとして働いています。我々は脳関門 and/orトランスポーターと病気の関わりを研究し、創薬と治療へ結びつけることを目指しています。
例えば、脳関門にはクレアチンを輸送するトランスポーター(CRT)が発現し、血中から脳へクレアチンを供給します。このCRTに変異があり輸送能力が低下してしまった場合、脳内のクレアチンレベルが低くなる脳クレアチン欠乏症(CCDS)になってしまいます。CCDSは小児知的・言語発達遅滞等の症状を呈しますが、未診断患者が多くいると考えられています。また、治療法もないため、診断と治療法の双方の実現が求められています。

2. がん早期診断と個別化治療診断の実現
がんは早期で発見することによって治療効果が飛躍的に向上します。しかし、現在人間ドック等で実施されている腫瘍マーカー検査は早期がんの発見能が必ずしも高くありません。そのため、早期にがんを発見する診断法が強く求められています。また、がん治療は多くの患者で副作用を生じます。また、近年、抗がん剤の価格が急激に高価となってきています。そのため、それぞれの患者にどのような治療が効果的かを見分ける診断も強く求められています。我々の研究室では、臨床医と共同研究を実施し、最新のプロテオーム技術を駆使することによって新しいがん診断の開発を行っています。
金沢大学病院 中田教授との共同研究において化学療法は無効で再発を頻発していた悪性髄膜腫患者に対し、がん組織検体の標的タンパク質発現量を測定し、その発現量を基にした分子標的薬の適応拡大治療を、倫理委員会の承認の元、実施しました。2週間でがん組織の壊死が認められ、1ヶ月後においてもがん組織の腫瘍の増大が認められない驚くべき結果を得ました。

3. 小腸と脳関門をこえるためのDDSキャリアの開発
近年、抗体医薬を含めた高分子生物製剤が数多く上市されています。これらのクスリは非常に効果的ですが、注射で投与する必要があります。このようなクスリを経口から飲むことができる要になれば、患者と医師へのメリットへ計り知れない物があります。また、同様にこれらのクスリは前述の脳関門の存在のため脳へ行くことが極めて困難なため、中枢疾患の薬の開発の障害となっています。そこで、我々の研究室では、高分子生物製剤の小腸吸収、及び脳関門の透過を促進する新しいDDSキャリアの開発を行っています。
これまでに小腸吸収およい脳関門の透過を促進する環状ペプチドを同定しています。

4. 腸内細菌とクスリの効き目
腸内細菌は宿主のヒトの生理機能に様々な影響を与えていることで注目されています。我々は、抗菌薬が様々なクスリと併用されることに注目し、抗菌薬により腸内細菌が減少したと行きにクスリの効き目にどのような影響があるのかを研究しています。
これまで、抗菌薬を5日間投与したマウスにおいてクスリの効き目に関わる多数の分子が肝臓と腎臓において発現が変化していることを報告しています。

5. 次世代プロテオミクス技術の開発
質量分析をもちいて試料中にタンパク質を網羅的に解析する技術をプロテオミクスと呼びます。我々はプロテオミクスの技術開発を行い、これまでにキットを実用化し、また、ベンチャー会社を立ち上げています。プロテオミクスは生命科学研究に多くの情報を提供しますが、一方で技術の困難さから多くの研究者にはハードルの高い技術として利用が広がっていません。そこで、我々は生命科学研究に真に役立つプロテオミクスを目指し、様々な技術開発を行っています。
質量分析の技術は、生命科学領域だけではなく創薬分野において必須の技術となりつつあります。本分野では、異なる特徴を持つ5台の最新質量分析装置を設置し、研究にフルに活用します。質量分析の基礎から応用まで習得することができます。

我々の研究室では、基礎研究を基盤として独自技術を組み込むことによって応用(臨床)研究へと発展させるため、基礎研究においても「薬学研究として医療現場にどのような応用ができるのか」というビジョンを持ちながら研究を実施します。また、臨床の現場との共同研究は基礎研究とは異なる新しい発見と緊張感があり、現場からの切実なニーズが大きなモチベーションとなります。

研究内容に興味のある方は大槻(sohtsuki(a)ohtsuki-lab.jp)までご連絡下さい。 (a)を@に変換して下さい。

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